ソーシャルマーケティングは偽善?偉業?
アウトドア小売REIのアンチ消費主義
キャンペーンが広告賞受賞

アウトドア小売のREIが、昨年、消費主義の象徴ともいえる年最大の大型セールの日「ブラックフライデー(感謝祭の翌日の金曜日)」に国内143店全店休業し、”買い物をやめて野外で遊ぼう”というキャンペーンを展開。12,000人の従業員に対して”野外で遊ぶため”に有給休暇を提供しました(詳細はこちら)。

アンチ消費主義が広がるアメリカでは、市民や企業が同社のこの決断を大絶賛。ソーシャルメディアで拡散され、170以上の企業や団体が同社に追随、大反響を呼びました。

結果、感謝祭の週末のネット売上は26%増加。
同社は会員制度を設けており、20ドルの会費で年10ドル以上の買い物をすると、年購入総額の10%が配当として還元される取り組みを展開していますが、昨年一年で会員数が100万人以上増え、過去最高を記録したそうです。

そして今月、このREIのキャンペーンが、世界三大広告賞のひとつであるワンショウ(One Show)の最高賞「ベスト・イン・ショウ」を受賞しました。

同賞は、クリエイティビティを評価するものであり、売上や評判が評価されるわけではありませんが、これほどの反響がなければ受賞できなかったでしょう。

偽善か偉業か

さて、近年増えているこうしたソーシャルマーケティング、単に売上増加を狙った「偽善」なのか、純粋に社会のためなのか、議論されています。

営利を追求することが目的であるはずの企業が社会に良い活動をすると、どうもきな臭い印象を与えてしまいがちですが、アメリカではこうした行為を「偽善」と見る人は少なくなってきているようです。

とはいえ、一概にすべてを評価するわけではなく、本物とニセモノを明確に区別しています。

たとえば、糖分たっぷりの飲料を販売する企業が”肥満対策のために運動しよう”というキャンペーンを展開しても、製品自体の問題を運動不足の問題にすり替えていることが透けて見えるため、効果があがらないどころか、批判の対象になってしまいます。一方で、REIのようなキャンペーンには大絶賛。

売上や利益だけを追求している企業は、どれだけ美しい言葉で装っても背後の欲望が滲み出て見抜かれてしまいますが、多少経営上の欲はあっても、真剣に社会のために活動し、そのうえで利益を出せる企業が評価されるようになっているのでしょう。

ワンショウの審査員のひとりであるハバス・カナダ社のヘレン・パクさんは、「ブラックフライデーに全店休業して野外で遊ぶことを促すという同社の決断は、まったくもって広告ではない。むしろアンチ広告といえるだろう」と言っています。

企業だけでなく、人においても同じことがいえるかもしれません。
高い収入を得ている人は評価されるどころかむしろ批判の対象となり、収入の多寡に関係なく素晴らしい活動をしている人が評価される時代になってきています。
仕事として個人として、どれだけ稼ぐかではなく、何を成すかが重視される時代になっているのではないでしょうか。

ウエブサイト:https://www.rei.com/

2016/05/27

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