ボトルなのか、炭酸飲料なのか、それが問題だ

毎年話題のスーパーボウルのCM。

たった30秒の広告枠が40億ドル(cnnmoney)という、巨額のマネーが動く一大ビジネス。
これだけの資金があるのなら社会のために使ったら良いのでは、とつい考えてしまいますが、それはさておき、スーパーボウルで放映されたCMが、今アメリカでちょっとした話題になっています。

それは、ソーダストリームのCM。

ソーダストリームは、炭酸飲料を自宅で作ることができる機械。
付属のボトルに水道水を注ぎ、専用のガス缶から二酸化炭素を注入し、別売りのシロップを入れると、コーラ味やサイダー味の炭酸飲料が出来上がるというもの。

これがあれば、わざわざ店でボトル入りの炭酸飲料を買う必要がなくなります。
ボトルの節約になるので環境にやさしい、ということで、エコ商品として販売されています(ボトル入り飲料の問題点についてはこちら)。

このソーダストリームがスーパーボウル用に製作したのが、「ゲームチェンジャー」と名付けられた、上のCM。
ペプシとコカコーラのルート配送スタッフが、互いに競い合って商品を店に運び入れようとしていたところ、突然ボトルが次々とはじけて消滅。
そのワケは、誰かがソーダストリームを使って炭酸飲料を作ったから。
ソーダストリームのシロップは、1本で炭酸飲料33缶分。
炭酸ガスのボトルは、小さいサイズなら1本で170缶分、大きいサイズなら310缶分。
ゆえに、ソーダストリームが使われる度に、その分不要になったボトルが消えていくという設定。
いまや、ペプシ vs. コークの戦いではなく、ボトル入り飲料 vs. ソーダストリームの戦いなのだという、二大ブランドに対する挑戦状のような比較広告です。

ところが、このCMにテレビ局から横やりが。

放映禁止が思わぬ宣伝に

ハーフタイムショーのスポンサーであるペプシと、番組内で2つの広告枠を買ったコカコーラ、両ブランドへの配慮から、CBSがこの広告の放映を禁止。
代わりに使われたのが、ブランドを特定しない下のマイルドなCM。

せっかく巨額を投じてスーパーボウル用に制作したCMが使われなかった、悲劇のソーダストリーム。
その怨念を晴らすかのごとく、未公開CMを同社のサイトで発表。
さらに、担当していた有名広告クリエイターが、放映前にこの情報をツイート。

すると、メディアがこぞってこのニュースを報道。
これまでにもスーパーボウルで比較広告が放映されたことは多々あるのに、なぜこのCMだけが取り下げられたのか、やはりテレビ局は大スポンサーには逆らえないのかと、よくある大企業批判にまで発展。

これにより、図らずもソーダストリームは一躍話題に。
発表した未公開CMは、450万ビューを獲得。
広告を断られたことが、良い広告になったという、まるで落語のようなお話。

これだけであれば、単なるマーケティング業界のおもしろネタで終わるのですが、実はソーダストリームは、エコ関係者の間で賛否両論ある企業。

エコ路線で売るソーダストリーム、本当にエコ?

エコ系の展示会には必ず出展している同社。
確かに、蛇口を捻れば出る水をボトルに詰めて売ることは、以前から問題視されていましたし、ペットボトルのリサイクル率が100%になり得ないことも問題です。

ただ、同社のシロップ用ボトルもプラスチック製ですし、アルミ製のガス缶もレフィル可能とはいえ、どれだけの人がレフィルしているかはわかりません。
同社のマーケティングどおり、長い目で見れば、ボトル入り炭酸飲料を買うより環境負荷は低いのかもしれませんが、その差がどこまであるのかは不明です。

そして、なにより問題なのは、炭酸飲料自体の課題がまったく改善されないこと。

肥満はいまや、世界中の大きな問題。
糖分の高い炭酸飲料は、肥満の主要因として、多くの自治体が課税やサイズ規制などを行っています。

ソーダストリームを使って、ライムやレモンやオレンジなど本物の果物で炭酸ジュースを作るならまだよいのですが、問題は別売りのシロップ。

コーラ味はもちろんのこと、フルーツ系のシロップでも果汁は一切使われていないうえ、人工甘味料や保存料など、とても健康的とはいえない成分がたくさん使われています。

ボトル入り炭酸飲料の代わりというのが謳い文句なので、市販の炭酸飲料と同等の味・価格を実現するためには仕方のないことなのかもしれませんが、社会派であることを主張する以上、少なくとも炭酸飲料の問題点を挙げ、本物のフルーツを使うよう指導するくらいの配慮は欲しいもの。

スーパーボウルにCMを出すことからも、広告を拒否されたことをマーケティングに利用していることからも、ボトルの削減効果をしきりに主張することからも、どうにもグリーンウォッシュに近い印象が拭いきれない同社の手法。

ともあれ、企業や製品の是非を判断するのは、自分自身。
そして、社会問題を解決できるかできないかは、私たちの行動次第。

ゴミも肥満も、解決しなければならない重要な社会問題です。
できることなら、ボトル入り飲料も炭酸飲料も飲まないのがベストですが、どうしてもやめられない人にとっては、ソーダストリームは環境負荷を削減するための良い製品といえるのかもしれませんね。

Soda Stream
ウエブサイト:http://www.sodastream.com/

2013/02/07

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