エコツーリズム

ecotourism

休暇が取れた!旅行へ行こう!
そんなチャンスが訪れたとき、どんな旅行を選びますか?

高級リゾート地へエステ旅行、日本よりも広くて割安な海外でゴルフ三昧、子供を連れてテーマパーク、大リーグやワールドカップなど本場のスポーツ観戦旅行、美しい魚たちと触れ合うダイビング旅行、世界遺産を見に添乗員付き有名観光地ツアー、パワースポットへ癒しの旅、憧れの大都市で買い物ツアー・・・

旅にはいろいろなカタチがありますが、良くも悪くも自分や周りにさまざまな影響を及ぼすもの。
旅を計画する前に、その旅行がどこにどのような影響を及ぼすのか、ちょっと考えてみませんか。

まずは、自分への影響。
いつもとは違う環境に身を置くことで心身共にリラックスできれば、旅行後の日常生活に活力を与えてくれるはず。
学びを得られる旅ならば、それが人生の糧となるかもしれません。
もし、その後の人生を大きく変えるような学びなら、その旅は一生の宝となるでしょう。
逆に、無理な行程での旅や必要以上に散財するような旅、何も下調べせずにパッケージツアーに便乗したり、誘われるがままについて行くだけの旅では、何も得られないだけでなく、心身ともに疲れ果て、帰ってから後悔することになるかもしれません。

次に、周りの人々への影響。
旅が終わった後、学んだことを伝えれば、家族や友人に良い影響を与えられるかもしれません。
訪れた土地の人たちに何らかのメリットを与えられる旅なら、自分も相手も幸せな気持ちになれます。
観光業が収入の大部分を占めているような国や地域への旅行なら、現地で消費することで、現地の人々に金銭的利益をもたらすことができます。

そして、環境や社会への影響。
どんな旅であれ、車や飛行機などで移動すれば、温室効果ガスを排出します。
移動距離が長ければ長いほど、汚染度合いは大きくなるでしょう。
豪華なクルーズ旅行や海洋生物と触れ合うダイビング旅行は素晴らしい経験となるかもしれませんが、それによってサンゴが傷つけられ、海の生態系に悪い影響を及ぼすケースもあります。
ビーチの近くにあるホテルのプールは、海水と違ってベトベトしないのが良いですが、消毒に使う塩素が地下水や海や河川に流れ出て、現地の水を汚染しているかもしれません。
観光客用に作られたゴルフコースの芝を維持するために大量の水を使う代わりに、農業や飲料水として使えたら、現地の人がもっと豊かな暮らしができるようになるかもしれません。
リサイクル設備が整っていないため、旅行者が捨てるペットボトルが大きなゴミ問題に発展している地域もあるかもしれません。

旅は、自分を成長させる良い経験となり得る一方、環境や社会への負荷も生み出すものなのです。

では、どうすればよいのでしょう。
旅行すべきではないということ?

もちろん、それができればよいですが、そういうわけにもいきません。
誰だって、日常とは異なる環境でリフレッシュしたいもの。

旅行はしたいけど、環境や社会への負荷は減らしたい。
その願いを実現できるのが、エコツーリズムなのです。

エコツーリズムとは、

"環境を保全し、地元住民の生活を向上させることができる、自然豊かな地域への責任ある旅行"
(Responsible travel to natural areas that conserves the environment and improves the well-being of local people.)

のこと (国際エコツーリズム協会)。

エコツーリズムによって、次のことが実現できます(国際エコツーリズム協会)。

  • 負荷を最小限に抑える。
  • 環境や文化に対して意識を向上させ、尊敬の念を抱く。
  • 旅行者と受け入れ側、共に有益な経験を生み出す。
  • 環境保護に対して直接、金銭的利益を生み出す。
  • 土地の人々に対して、金銭的な利益と権限を付与する。
  • 受け入れ国の政治・環境・社会的問題に敏感になる。

エコツーリズムの代表的な行き先は、人の手が入っていない原生林や、昔ながらの生態系が保全・保護されている場所。
旅行することで、人間と動植物との関係や生物多様性などを学ぶことができ、保護区域への入場にお金を払うことで環境保護に貢献することにもなります。

"エコ"だけにこだわる必要はありません。
環境NPOのワールドウォッチ研究所は、以下のように旅行を分類しています。

  • エコツーリズム
    環境を保全し、地元住民の生活を向上させることができる、自然豊かな地域への責任ある旅行
  • ジオツーリズム
    環境や歴史的遺産、文化、住民の生活など地理的特性を維持・高めるための旅行
  • プロプアーツーリズム
    貧しい人に利益を生み出す旅行
  • レスポンシブルツーリズム
    地域の利益を最大化し、社会・環境的な悪い影響を最小限に抑え、不安定な文化や生息環境、種を地域住民が保全するのを手助けする旅行
  • サステナブルツーリズム
    将来への持続可能性を守り高めるという、旅行者・受け入れ側双方のニーズを満たした旅行
  • ネイチャーツーリズム
    自然環境をテーマとする旅行
  • アドベンチャーツーリズム
    ネイチャーツーリズムのひとつだが、危険を伴い、高度な身体的運動や特別なスキルを必要とするもの
  • マスツーリズム
    多国籍企業、季節性、パッケージツアー、目的地への直接的な金銭的メリットが極めて低い、などの特徴を持つ、"海、砂、太陽"がテーマのリゾート地を典型とする大規模な旅行

エコ、ジオ、プロプアー、レスポンシブル、サステナブルツーリズムは、自分や周りに良い影響を生み出す旅となり得ます。

ただし、行った先で何を学び得るか、学んだことをどう活かすかは、自分次第。
多くの場合、こうした旅行が実現できる場所は人里離れた所にありますが、飛行機や船、車でCO2を排出して環境に大きな負荷をかけて素晴らしい自然や文化を見に行っても、ただ希少な動植物に出会えたとか、原住民と触れ合えたことで喜び満足してしまっては意味がありません。
なぜ動植物が保護されなければならないのか、歴史的資産の背景にあるものは何か、現地の人々はどのような問題を抱え、問題解決のために自分がどう貢献することができるのか、そういったことを考え、旅の後に行動に移してはじめてエコツーリズムやサステナブルツーリズムは成立するのです。

ネイチャーツーリズムやアドベンチャーツーリズムは、自然と親しむという点で一見環境に配慮しているように見えますが、人間の楽しみのために自然を破壊する可能性もあるので、必ずしも良い影響が生まれるとは限りません。

マスツーリズムも時にはよいですが、大型ホテルよりも地元の人が経営する民宿、パッケージよりも個人旅行を選べば、環境や社会への負荷を少し削減できるかもしれません。

エコツーリズムであれマスツーリズムであれ、負荷が掛かるのは同じこと。
どうせ行くなら、自分の住んでいる地域でできる買い物やゴルフやエステよりも、人生を変えるような貴重な経験を得られる旅の方が、ダンゼン有意義。

次に旅行に行こう!と思ったとき、ちょっと立ち止まって、旅の影響や目的を考えてみてはどうでしょうか。
無目的に旅先を決めるより、きっと充実した旅になりますよ。

The International Ecotourism Society (TIES)
ウエブサイト: http://www.ecotourism.org/

World Watch Institute
ウエブサイト: http://www.worldwatch.org/

2012/02/10 訂正
2010/09/30

  • ピックアップ記事