バンブー(竹)素材

bamboo
(Photo by Steve Webel from flickr.com)

一時は環境にやさしい繊維として広く普及したものの、現在は米連邦取引委員会から厳しく規制されている、バンブー(竹)繊維。

実は、竹繊維には2種類あります。

ひとつは、バンブーリネンといわれるもの。
麻やヘンプと同様の製法で作られる天然繊維で、竹の表皮をはがして中の繊維質を取り出し、繊維にします。
麻と同様に、堅くしわになりやすい素材ですが、通気性や吸水性に優れています。
ただし、竹の繊維は非常に短いため、衣料用の糸にすることは難しく、市場にはほとんど出回っていません。

もうひとつは、バンブーレーヨンといわれるもの。
レーヨンと同じ製法の化学繊維で、竹を溶かして繊維を取り出し、パルプ化して、化学物質を使用して人工的に作られます。
一般的なレーヨンと同様に、やわらかく、しわになりやすい素材です。

バンブーレーヨンの問題点

問題となっているのは、バンブーレーヨンの方。
エコファッションが市場に出始めた頃、バンブーレーヨンは竹が原料なので環境にやさしい繊維と宣伝されていました。
ところが実際は、原料に竹を使ってはいるものの、生産過程で有害な化学物質を使うため、環境にやさしいとはいえないのです。
それに、本当に竹を原料に使ったかどうか、製品になった段階で証明することは難しいのです。

米連邦取引委員会は、次のように指摘しています(FTC Business Alert)。

「"バンブー(竹)"と表記されている繊維のほとんどは、ただのレーヨンです。
一般的に、レーヨンは生産時に有害な物質を使用し、大気に汚染物質を排出します。
レーヨンの原料には竹を含め様々な植物を使用することができますが、製品化されたあとに、原料となった植物を特定することはできません。」

「竹から直接作られた製品(一般的に"機械処理された竹繊維"と称される<バンブーリネンのこと>)でない限り、竹と表記することはできません。
繊維名に「竹」と表記するには、竹繊維でできていることを証明するため、科学的検証・分析などの確実な証拠が必要となります。
誰かが言っていたからというのは、証拠になりません。
レーヨン製品には竹が本来持つ抗菌性がある、という主張に関しても、同様に明確な証拠が必要です。」

「竹繊維から直接作られたもの<バンブーリネンのこと>ではなく、竹を植物源として製造された繊維には、"レーヨン"や”竹原料のレーヨン”というように適切な一般名を表記し、広告にもその名称を使用しなければなりません。」

取引委員会はこれまでに、バンブーレーヨンが環境にやさしい繊維であると宣伝した企業を摘発し(詳細はこちら)、バンブーレーヨンをバンブーと記載したことで80社近くに警告を発しています(FTC)。

そもそも、なぜ、バンブーレーヨンが環境にやさしいといわれるようになったのでしょうか。

竹の効能

実は、竹自体は、環境にやさしい植物なのです。

竹は、1日に30cm-1mも伸び、成長がとても早いので肥料をほとんど必要としません。
抗菌性があるので殺虫剤も必要なく、毎年種を植えなくても勝手に生え変わる性質を持っています。
さらに、根に水を蓄える性質があるため、水やりが少なくて済みます。

こうした性質を利用して、バンブーレーヨンが環境にやさしいといわれるようになったのですが、生産時に竹本来の優位性を覆す環境負荷がかかるため、環境にやさしいとはいえないのです。

一方、竹繊維を直接使うバンブーリネンや、竹そのものを家具などに使う分には、環境にやさしいといってもよいでしょう。

ただし、竹の需要が増えたことにより、竹の単作が増えて虫がつきやすく病気になりやすくなるなど性質が弱くなったり、竹栽培のために違法に森林伐採されるといった問題も生じています。

「過ぎたるは及ばざるがごとし」(なにごとも、度を過ぎることは、 程度に達しないことと同じで、 良いことではない)ということわざにもあるように、どんなに環境にやさしいといっても、そればかりに傾倒すれば、他の問題が生じ、結局環境にやさしくなくなってしまいます。

製品を選ぶ際には、特定の繊維や原料ばかりでなく、さまざまな環境にやさしい繊維・原料をバランスよく選び、原料だけでなく生産工程全体の環境負荷を考え、そして、必要な分だけ購入・使用すること。
それが、私たちにできる環境負荷削減策といえるでしょう。 

*エコ素材に関する詳しい説明は、こちらの本に記載しています。

2012/01/19 改訂
2008/04/05

  • ピックアップ記事