オーガニックスーパーのホールフーズ、
遺伝子組み換え食品の表示を義務化

Whole Foolds Market Non-GMO
(Photo courtesy of Whole Foods Market)

全米最大のオーガニックスーパー、ホールフーズが、またも新機軸。
2018年までに、遺伝子組み換え食品に対し、表示を義務化することを発表しました。

なぜ表示が必要?

アメリカで栽培される大豆やトウモロコシは、90%程度が遺伝子組み換えされています(詳細はこちら)。
にもかかわらず、アメリカでは遺伝子組み換え食品の表示は義務づけられていません。

一方、日本では表示が義務化されていますが、例外規定が多く、どの食品が遺伝子組み換えなのか、消費者には判断がつきません(詳細はこちら)。
たとえ遺伝子組み換え作物を原料として使っていても、組み換え作物が全重量の5%未満で原料中の上位3位以下である場合、あるいは、しょうゆや油(マヨネーズなど)は表示しなくても良いことになっています(消費者庁)。

つまり、遺伝子組み換えでないことが明記されている商品か、オーガニックを選ばない限り、遺伝子組み換え食品を食べている可能性がかなり高いのです。

ところで、そもそも、遺伝子組み換え食品は安全なのでしょうか。

アメリカでも日本でも、政府や企業は安全だと主張しています。
一方、科学者や非営利団体は、遺伝子組み換え種子による動物の成長障害や生殖障害、アレルギー反応が起こったという研究結果を発表し、環境への影響も懸念しています(詳細はこちら)。

遺伝子組み換え、誰のため?

では、何のために、遺伝子組み換え種子が使われるのでしょうか。

現在市場に流通している遺伝子組み換え種子のほとんどは、害虫や除草剤に強い遺伝子に組み換えたもの。
つまり、農業の生産性向上のために使われているのであって、消費者のためというわけではないのです。

それに、遺伝子組み換え種子の効果があるのは数年だけで、次第に耐性のある強力な害虫や雑草が出てくるため、根本的な解決にはなりません。
そもそも、オーガニックの農作物は、遺伝子組み換え種子も、殺虫剤も、除草剤も、化学肥料も使わずに栽培されているのですから、適切な農法で栽培すれば、わざわざ遺伝子を組み替えなくても害虫や雑草による被害を避けることができるのです。

消費者のために使われているわけではなく、そのうえ、安全性が疑問視されているのですから、少なくとも、遺伝子組み換えであることを明示し、消費者自身がそれを選ぶか否か、判断できるようにすべきでしょう。

ホールフーズが表示の義務化に踏み切ったのは、こうした声が高まってきたからなのです。

「表示の義務化は、お客様の声に応えるためです。弊社のお客様は、一貫して遺伝子組み換えの表示を求めていました。こうした声にお応えするために、私たちができる範囲内で、つまり弊社の店舗で表示を義務化するのです。」

と、同社CEOのひとりであるウォルター・ロブ氏。

ホールフーズは、2009年からプライベートブランド商品への非遺伝子組み換え認証の取得を開始し、サプライヤーにも認証取得を促してきました。
既に、同社が扱う商品のうち、250ブランド3,300商品が非遺伝子組み換え認証を取得しています。
さらにこれを拡張すべく、表示の義務化を決定したのです。

今後5年の間に、同社に商品を卸すサプライヤーは、認証取得か、遺伝子組み換え商品であることを明示するか、どちらかを選択しなければなりません。
といっても、食品の安全に対する意識の高い顧客が多いホールフーズで、「遺伝子組み換えを使用しています」と書かれた商品を買う人はいないでしょうから、実質的には、非遺伝子組み換え認証の取得が義務付けられたということでしょう。

消費者の希望と業界の思惑

遺伝子組み換えは、近年アメリカでホットな話題。

大豆やトウモロコシばかりでなく、早く成長する遺伝子に組み換えた食用の鮭の流通が認可される可能性が出てきたからです。
もし鮭の遺伝子組み換えが許可されれば、卵も牛肉もと続くことになるかもしれません。

世論調査では、アメリカ国民の大多数が表示を望んでいます(Just Label it)。

にもかかわらず、昨年末にカリフォルニア州で行われた、遺伝子組み換え食品の表示義務化の是非を問う住民投票では、反対多数で否決という結果に。
これは、大手食品企業やバイオ産業が巨額を投じ、表示によるコスト増で食品価格が上がるといった広告を大々的に展開したからだとされています。

これまで遺伝子組み換えもそうでないものも混ぜて流通していたものを、表示の義務化により、分けて処理しなければならなくなるのですから、流通工程全体で大きな改変が必要になり、コストが上がるのは当然です。
しかし、企業の経費削減のために消費者の選択の権利を剥奪すべきではないですし、価格という武器で消費者を脅すのは、食品を扱う企業としてあるまじき行為でしょう。

現状では、遺伝子組み換えを避けたいのなら、オーガニックを選ぶしかありません。
しかし、多くの小売企業がホールフーズの動向に倣い、表示を義務化するようになれば、消費者の意思で選べるだけでなく、次第に不必要な遺伝子組み換え食品は減っていくことになるでしょう。

ただし、それを実現できるか否かは、"消費者"である私たちの行動次第なのです。

Whole Foods Market
ウエブサイト:http://www.wholefoodsmarket.com/

2013/03/11

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