Gスターとファレル・ウィリアムスがコラボ
海のプラスチックゴミで作るデニムコレクション
~その背後にある地球規模の問題とは~

デニムブランドのGスターとミュージシャンのファレル・ウィリアムスがコラボし、海のプラスチックゴミで作るデニムコレクション「ロウ・フォー・ザ・オーシャン」を発表しました。

よくあるファッションブランドのエコマーケティングかと思いきや、実はこの企画を持ちかけたのは、Gスターではなく、ファレル・ウィリアムス。

フォーブス誌によると、1年前、彼が共同経営者として名を連ねるリサイクルプラスチック繊維企業バイオ・ヤーン社が、海洋問題対策イニシアチブのパーリー・フォー・ザ・オーシャンと共に、海のプラスチックゴミからデニムを作れないかとGスターに相談したのが始まりだそう。

セレブからのオファーに即快諾したGスターですが、単に生地を買ってデニムを作る通常業務と異なり、プラスチックゴミから作った繊維を同社のクオリティに見合うデニムに仕上げる作業は、大変だった様子。

Gスターは、このプロジェクトを短期のコラボコレクションで終わらせず、長期提携して、同社の他製品にもバイオ・ヤーンの繊維を使うことを検討しているとのこと。

回収したプラスチックを糸にするのはバイオ・ヤーン、それを購入してデニムに仕上げるのがGスター、ファレル・ウィリアムスはデザイン工程にも深く関わっているのだそう。

そして、プラスチックゴミの回収は、パーリー・フォー・ザ・オーシャンの公式パートナーである海洋保全団体シー・シェパードが担当するとのこと。
日本では過激な反捕鯨活動で悪名高い同団体ですが、海洋汚染対策にも力を入れており、このプロジェクトでは、回収のほかに科学的研究や啓蒙活動なども行うそう。

世界中のポイ捨てゴミ、海の真ん中に集積

ところで、なぜ海のプラスチックゴミからデニムを作る必要があるのでしょうか。
なぜ、ファレル・ウィリアムスはそこに目をつけたのでしょう。
海のプラスチックゴミの、いったい何が問題なのでしょうか。

北太平洋に、「太平洋ゴミベルト(グレート・パシフィック・オーシャン・ガーベッジ・パッチ)」と呼ばれる、プラスチックゴミが渦になって集積している場所があります。

その大きさは、フランスの国土と同程度とも言われているほど。

アルガリタ海洋研究所が調査したところ、その地域で採取した水の中には、生息するプランクトンの8倍もの量のプラスチック破片が含まれていたそう。

なぜこれほど大量のプラスチックゴミがこの場所に集積するのかというと、はるか遠くの陸上や海岸で捨てられたゴミが海流に乗って流され、流れが渦となるこの場所に集まってきてしまうから。

海岸で流されたビーチサンダルや浮き輪、道ばたでポイ捨てされたビニール袋やペットボトル、ドブ川に投げ捨てられたタイヤなど、あらゆるゴミが排水溝や河川を通って海に流れ出し、海流に乗って何千キロも浮遊して、ここにたどり着くのです。

集積したゴミは、元の製品のかたちのまま残っているものあれば、砕けて小さなプラスチック片になっているものもあります。

ペットボトルのキャップやレジ袋など、原型を留めているものの比較的小さなゴミは、魚や鳥が餌と間違えて飲み込み、呼吸・排泄困難に陥って死に至るという問題が起こっています。
猟師が捨てた網に引っかかって動けなくなった魚や亀も、多く見つかっています。

極小のプラスチック片が及ぼす、大きな影響

しかし、より深刻なのは、小さな破片になったプラスチックです。

プラスチックは、太陽光に当たることで脆くなり砕けていきますが、基本的には生分解されませんから、分子レベルの小さな破片となっていつまでも残り続けます。

さらに、プラスチックは有害物質が含まれているものが多く、化学物質が付着しやすい性質もあるため、小魚やプランクトンがこうした有害なプラスチック片を取り込み、それを大きな魚や鳥が食べ、食物連鎖の上位に行くほど毒性が濃縮されていきます。
そして、食物連鎖の最上位にいる私たち人類にも、影響が及びます。

極小のプラスチック破片は回収するのが難しいため、ロウ・フォー・ザ・オーシャンのデニムに使われるプラスチックゴミは、比較的大きな回収しやすいものだけになるのでしょうが、それでも問題解決への一歩として素晴らしい活動です。
なにより、セレブが参画することで、多くの人々にこうした問題を知ってもらうことができるのですから、有意義な取り組みといえるでしょう。

私たちひとりひとりがこの問題に対処するのに最も有効な手段は、プラスチック製品を使わないことです。

現代社会でプラスチックを一切使わずに生活するのは難しいことですが、使い捨て製品はなるべく使わない、どうしても必要なときは使用後にリサイクルする、といった心がけが大切なのではないでしょうか。

ファレル・ウィリアムスは、ウォールストリート・ジャーナル紙の取材に、こう答えています。

「俺は熱心な活動家でも何でもない。小さいながらも自分がすべきことをやっているだけさ。どんな行動にも意義があると思うから。」

G-Star Raw for the Ocean
ウエブサイト:https://www.g-star.com/en_us/rawfortheoceans/

Bionic Yarn
ウエブサイト:http://www.bionicyarn.com/

The Algalita Marine Research Institute
ウエブサイト:http://www.algalita.org/

2014/02/18

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