バイオミミクリ Biomimicry

biomimicry
(Photo by John "K" from Flickr.com)

アメリカで話題のことば、「バイオミミクリ」。

聞きなれないことばですが、「バイオ」は生物、「ミミクリ」は真似る、という意味。
バイオミミクリは、"自然の英知を模すことにより、人類が抱えている問題を解決していく"、という意味の科学用語です。

バイオミミクリは、1997年に生物学者ジャニン・ベニュスさんの「Biomimicry: Innovation Inspired by Nature」という本で初めて紹介されました。
比較的新しいことばですが、環境問題に注目が集まる昨今、話題を呼んでいます。

一般の人が通常の会話で使うことばではないかもしれませんが、皆が一般的に使っているものが実はバイオミミクリによって作られたものだった、ということも多く、実は身近な概念なのです。

では、バイオミミクリとは具体的にどういうことなのでしょう。

たとえば、ハスの葉っぱというのは、ザラザラしているため撥水効果があり、雨水が葉に当たり滑り落ちるときに、同時に葉の表面の汚れを掃除する機能を持っています。
これと同じ構造を布やペンキやガラスなどに応用し、表面がザラザラした布、ペンキ、ガラスを作ると、通常塗るべき撥水・防シミ加工用の化学薬品を塗らずに、撥水・シミ防止機能を保持できてしまうのです。
もちろん、ただ表面をザラザラさせれば何でも良いというわけではなく、こうした技術の開発には長年の研究と深い科学知識を要しますが、自然の英知と人間の科学知識を重ね合わせることで、環境への負荷が少ない新技術を開発することができるのです。

他には、コウモリの超音波の機能を模して作られた盲人用の杖や、カワセミのくちばしを模して作られた防音・省エネ効果のある新幹線など。

まだ実現はしていませんが、強度が非常に強いクモの巣の機能を模して切れない糸を作る研究も行われているそう。

地球に生命が誕生してから、38億年。
どんなに優れた科学知識を以ってしても、人間が自然のすべてを知ることはできないでしょう。
自然を敬い、緻密な構造によって成り立っている自然の仕組みを学び、自然の英知に教えてもらいながら、人間の頭脳と知識を持ってものづくりを行えば、環境負荷の少ない製品やサービスが生まれ、人間と地球が共存できるサステナブルな世界が実現するかもしれません。

自然をコントロールするのではなく、自然から学ぶ。
シンプルだけどとても大切なことを、バイオミミクリは教えてくれているのです。

Biomimicry Institute
ウエブサイト: http://www.biomimicryinstitute.org/

2008/07/10


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