米連邦取引委員会の
環境マーケティング・ガイドライン
「グリーンガイド」

FTC GreenGuides

米連邦取引委員会が発行する、環境に関するマーケティング・ガイドライン「グリーンガイド」。

あくまでガイドラインであり、法的効力はありませんが、実質的には限りなく法律に近い文書。
連邦取引委員会は、不正行為を禁止したり不正を行う企業に罰金を課す権利を持つ行政機関。
これまでに、環境関連で虚偽のマーケティングを行った数々の企業を摘発し、それでも態度を改めない企業に対しては訴訟を起こしています。

「グリーンガイド」は、1992年の初版発行後、96年と98年の改訂を最後に手を入れられていませんでしたが、環境に配慮した製品の市場拡大に伴い、2008年に見直しのための公聴会を開始。
10年には訂正案が提出され、5,000以上のパブリックコメントの精査や消費者の認知度調査などを経て、2012年10月1日に改訂版が発表されました。

改訂前に記載されていたのは、「分解可能」「堆肥化可能」「リサイクル可能」「リサイクル原料を使用」「資源削減」「オゾン層にやさしい」「一般的な環境用語」の7つの用語のみでしたが、改定版では新たに、「カーボンオフセット」「○○フリー(未使用)」「毒性がない」「再生可能エネルギーを使用」「再生可能原料を使用」「認証」の6項目が追加。
改訂前の7項目も、大幅に加筆修正されました。

最も頻繁に使われる環境用語、「ナチュラル」「サステナブル」「オーガニック」に関しては、改訂後も記載されていません。
なぜなら、オーガニックは農務省が定義と認証を行っており、幅広い意味を持つナチュラルサステナブルは、環境に限定したガイドラインを制定するのが難しいため。

改訂版「グリーンガイド」は、企業にとってかなり厳しいものになりました。
各用語の使用条件は、以下のとおりです。

「一般的な環境用語」

「グリーン」や「エコフレンドリー(環境にやさしい)」といった言葉のこと。
効果を明確に立証できる場合のみ使用できます。
ほとんどの製品において、何の説明もなく明らかな環境優位性を証明することは不可能。
つまり、実質的に、これらの言葉は単体では使用できないということです。
ただし、「リサイクル素材を使用しているからグリーン」など、具体的にその理由を明示し、その効果を立証できる場合は、説明文と共に使用できます。

「リサイクル可能」

理論的にリサイクルできるのではなく、製品を販売する地域で60%以上の人が実際にリサイクルできる場合に限り、使用できます。
そうでない場合は、「お住まいの地域ではリサイクルできません」や「リサイクル施設があるごく限られた地域でのみリサイクル可能」などの注意書きを入れなければなりません。

「分解可能」

廃棄された後、1年以内で完全に分解し自然に還る製品にのみ使用できます。
これまで、10年経たないと分解されないようなものでも、10年後には"分解可能"ということで、この文言が使われることがありました。
こうした不正が起こらないよう、1年という明確な基準を示し、言葉の意味を明瞭にしたのです。

ただし、廃棄後に埋立地や焼却場、リサイクル処理場に持ち込まれる製品は1年で分解されるとは考え難いため、この文言は使用できません。
たとえば、土壌に埋めて適切な水分と空気を管理すれば1年以内に分解する製品でも、消費者がゴミとして廃棄し、埋立地や焼却場に持ち込まれれば、1年以内には分解されません。
この場合、「分解可能」の表現は不正ということになります。
これを避けるためには、上記のように分解される際の条件を明記しなければなりません。

「堆肥化可能」

家庭で簡単に堆肥化できる場合のみ使用できます。
堆肥化工場に持ち込む必要がある場合は、その旨の記載が必要です。
また、堆肥化した後の堆肥が安全に使用できるものであることを、科学的に証明する必要もあります。

「リサイクル原料を使用」

ゴミをリサイクルした場合のみ使用できます。
生産過程でこぼれた原料や小さなくず原料を集めて再び原料の一部として利用する場合でも、業界全体でこの工程が一般的であるならば、リサイクル原料とはいえません。
また、原料の一部がリサイクル素材である場合は、何%かを明示しなければなりません。

「再生可能エネルギーを使用」

全生産工程で再生可能なエネルギーを使用している場合のみ、使うことができます。
ただし、風力や太陽光など、エネルギーの種類を明記することが推奨されています。
生産工程の一部で石油由来のエネルギーを使用している場合は、この文言を使用することはできませんが、同等量の再生可能エネルギー権を購入している場合に限り、使用可能です。

「再生可能原料を使用」

原料のうち、どれが再生可能か、なぜそれが再生可能といえるのかを具体的に明記しなければなりません。
たとえば、「この床材は、100%竹製です。竹は成長が早い植物なので、この製品が使われる期間と同じかそれよりも早く成長します」というように、具体的な説明が求められます。

「毒性がない」

人体と環境ともに毒性がないことと、それを科学的に証明できる場合のみ、使用できます。

「詰め替え可能」

使用後に容器を回収して再度詰め替えて販売するか、消費者が容器を再利用して詰め替えられる仕組みを確立していることが使用条件となります。

「カーボンオフセット」

温室効果ガスの排出削減量を適切な方法で算出し、それを科学的に立証できる場合のみ、使用できます。
ただし、排出権を販売する場合は、同じ権利を複数回販売しないこと、2年以内に削減プロジェクトを実行することが求められています。
たとえば、旅行会社が旅行客に対し、飛行機利用による温室効果ガス排出量をオフセットする権利を販売し、その後2年間にわたり排出削減プロジェクトを行わなければ、不正とみなされます。
また、法的に削減が義務付けられている場合は、この文言を使用することはできません。

「○○フリー(未使用)」

その物質の含有量が認識できないほど微量であること、人体に被害がない程度の量であること、その物質を意図的に添加していないことを立証できる場合に限り、使用できます。
また、代わりに使用されている物質が、同等の環境負荷を生み出していないこと、人体に害がないことを科学的に証明しなければなりません。
ただし、もともと製品にその物質が含まれていない場合は、この表現を使用することはできません。
たとえば、乳製品アレルギーがある人にアピールしたいがために、乳製品とはまったく関係のない製品パッケージに「乳製品フリー」と記載するのは、意図的な情報操作とみなされます。

「オゾン層にやさしい」

この表現は、多くの場合不正とみなされます。
オゾン層破壊物質は、世界的に使用が禁止されています。
敢えてこうした文言を使用する必要はないでしょう。

「資源削減」

他の製品と比較して資源を削減したことが明らかである場合のみ、比較対象を明記すれば使用できます。
たとえば、「当社比較で前の製品より10%廃棄物削減」など。

認証

環境に関する認証システムは数多くありますが、中には真偽が怪しいものもあります。
「グリーンガイド」では、基準や環境メリットを明確にしていない認証は使用しないこと、どの素材に対する認証なのかを明記すること、第三者機関による信頼できる認証を得ていても、使用するマーケティング用語はすべて科学的に立証できるものであることを指南しています。

このような厳しいガイドラインが作られたのは、環境にやさしい製品を購入したいと考える消費者の善意を利用して、誇大広告や偽りのマーケティングを行うグリーンウォッシングが横行しているから。
意図的でなくても、知識不足ゆえにグリーンウォッシュが起こることもあります。

環境負荷削減のために真摯にものづくりをする企業の努力に報いるためにも、ガイドラインは必要なのです。

私たち消費者も、不正を見つけたらすぐに連邦取引委員会に通報する、不審な商品は買わないなど、積極的に行動することで、悪行を防ぐことができるでしょう。

Green Guides by Federal Trade Commision
ウエブサイト:http://www.ftc.gov/os/2012/10/greenguides.pdf

2012/10/02

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