キノコを育てて作る梱包材、エコベイティブ
Ecovative

Ecovative
(Photo Courtesy of Ecovative)

これからの時代、梱包材は製造するのではなく「育てる」ものに・・・?

一般に、発泡スチロールなどの梱包材は、化学物質を混ぜたり加熱したりして作られますが、なんと、化学物質を一切使わずに、キノコの菌糸を培養して容器を作ってしまった企業、エコベイティブ。

いったい、どうやって作るのかというと・・・

全米各地から集めてきた、そば殻や麦のさや、綿花の外皮などの農業廃棄物に菌糸を混ぜ、型に入れて暗室に置いておくだけ。

すると、アラ不思議。
5-7日で、上の写真のような容器が出来上がり。

水も化学物質も使わず、菌糸が成長して農業廃棄物をつなぎ合わせることで、立派な容器に仕上げてしまうのです。
16cmの立方形のエコベイティブの容器の中には、13km分もの菌糸が張り巡らされているのだそう。

ただし、そのまま放置すると菌糸が成長してキノコが生えてしまいますから、頃合いを見て熱を加え、成長を止める必要があります。
もちろん、死んだ菌糸からは、キノコが生えることも胞子が飛散することもありません。

原料が菌糸やそば殻だから、輸送中に生分解されてしまうのでは、という心配も不要。
木から作ったダンボールと同様に、キノコから作った梱包材は、適切な環境下では分解されて自然に還りますが、乾燥した清潔な場所に置いておけば、永遠にその形を維持してくれるのだそう。

今のところ、食品医薬品局の許可を得ていないこともあり、食品をそのまま入れることはできませんが、密閉された食品なら問題ないとのこと。

大学生が授業中に発明した、高度な科学技術

一見簡単に作れてしまいそうに見えますが、もちろん、誰もが自宅で作れるというわけではありません。

エコベイティブが製造工程の特許を取得しているうえ、高度な科学技術を駆使して配分や温度が決められ、不要な菌が生育しないよう、無菌状態で培養する必要がありますから、特別な環境下でしか作れません。

実は、この技術を発明したのは、大学生。

ふたりの大学生、イーベンとギャビンが、菌糸が成長して木片をつなぎ合わせていく様子を観察し、授業中に、製品化に繋がる新たな手法を発明。
卒業後、この発明に可能性を感じた教員の支援を得て、エコベイティブを設立。

すると、その話を聞きつけた菌学者が事業に参加。
2007年にはラボを設立し、政府や科学団体から補助金を得て、09年には従業員を抱え、大きなオフィス兼倉庫に移動。
そして、2010年に、オフィス家具会社と提携して初の製品化が実現したのです。

科学者や技術者や製造業者など、さまざまな分野から人智を集め、製品化を実現したエコベイティブのマッシュルーム・パッケージ。

現在は、コンピュータやワインの梱包材として使われていますが、今後、建物の断熱材や消費財の素材としての使用も検討しているそう。
さらに、菌糸の機能を活かして、これまでにないまったく新しい素材も開発しているとのこと。

すぐに捨てられてしまうものだからこそ、梱包材は環境負荷が少なければ少ないほど良いはず。

水もエネルギーも化学物質も使わない、新しい時代の梱包材として、注目が集っています。

Ecovative
ウエブサイト:http://www.ecovativedesign.com/

2013/03/04

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