水道水 vs ペットボトル水
クールな人は水道水を飲んでいる?

ニューヨークをはじめ、アメリカの都市部では、「ペットボトル入りの水」に対して冷たい視線が向けられています。

人気シェフ、マリオ・バタリ氏のイタリアンレストラン"デル・ポスト"をはじめ、多くのレストランでペットボトル水がメニューからなくなり、代わりに水道水が提供されたり、ニューヨーク市が"水道水を飲もう"キャンペーンを展開したり(ウォーター・オン・ザ・ゴー・キャンペーン)、ペットボトル水不買運動が行われたり。

ペットボトルの水を飲む人は、ファストフードのハンバーガーを食べる人と同様に、環境のことを考えていない、かっこ悪い、という目で見られるようになり、逆に、水道水を飲むことは、オーガニック食品を食べることと同様に、環境のことを考えていてクール、というムーブメントが起こりつつあるのです。

でも、ペットボトル入りの飲料はたくさんあるのに、いったいなぜ、水だけが批判の対象になっているのでしょう。

理由のひとつは、ペットボトル入りの水は、味も安全性も水道水と大して違いがない、むしろ水道水よりも国による規制が少なく危険性が高いという事実が判明したこと(天然資源保護協議会環境作業部会)。
現在アメリカで流通しているペットボトル水の25-40%はただの水道水を詰めただけ、という調査結果も出ています(天然資源保護協議会)。
「清流○○の水」や、「○○氷河の水」なんて名前が付いていても、実際には地元の水道水をろ過しただけのことも多いのです。

もうひとつは、環境負荷。
水は蛇口をひねれば出てくるものなのに、わざわざエネルギーや資源を使ってペットボトルを生産し、それに詰めて販売する必要はない、ということに気づいたのです。
地球資源は限られているもの。
今後ますます増えるであろう人口や資源需要を考えれば、不必要なものに資源を費やす余裕などないのです。
さらに、気候変動が深刻化する中、アメリカ国内に安全でおいしい水があるのに、フランスやアイスランドからCO2を排出して水を運んでくる必要もありません。
アメリカで1年間に消費されているペットボトル水は、290億本(2007年)。
その分のペットボトルを製造するのに、1,700万バレルの石油(車100万台1年分)が使われているのです(アースポリシー研究所)。

そのうえ、アメリカ国内で流通しているペットボトルのうち、リサイクルされているのはたった30%程度(全米ペットボトル資源協会)ということもあり、ペットボトル水の環境負荷の高さが盛んに取り沙汰されているのです。

ペットボトル水に対する批判は、州や市などの自治体にも広がり、ペットボトル水税の導入や公共施設内でのペットボトル水販売禁止など、規制が行われています。
シカゴ市では、08年初からペットボトル水税を導入。
ぺリエや味のついた水以外の純粋なペットボトル入り水に対し、1本につき5セントの税金がかけられています(シカゴ市)。
ニューヨーク市では、2010年からペットボトル水購入時にデポジットとして5セント徴収される制度が始まっています(ニューヨーク州ペットボトル水デポジット制度)。

当然ながら、ペットボトル水を販売している飲料メーカー業界はこれに反論。
各地で法案が提出される度に、ロビー活動を展開しています。
また、ペットボトル水大手のポーランドスプリングは、30%プラスティック量を減らしたエコボトルを開発するなど(PolandSpring)、環境負荷削減努力を示ることで、反対派の動きを牽制しています。

ペットボトル水が普及したのは、ほんの十数年前のこと。
それまでは、水は水道から飲むのが当たり前でした。
飲料メーカーの巧みなマーケティングにより、水道水よりペットボトル水の方が水質が良いようなイメージが植え付けられてしまいましたが、実態はそうではないことが明らかになったのです。

ニューヨークの水は、安全性が高いことで知られています。
通常、水道水は浄水場で消毒・ろ過されますが、ニューヨーク市の水道水はろ過する必要がないと認められているアメリカ5都市のうちのひとつ(NY市環境保護局、NY以外は、ボストン、サンフランシスコ、ポートランド、ワシントン州タコマ)。
水質調査は、日に900回、年に33万回、1,000ヵ所から取水して行われています(NY市環境保護局)。
水道管が古い家屋などでは、水道管に使われている鉛などが水道水に混入する可能性もあるので、100%安全というわけではありませんが、心配な場合は市が配布している無料の鉛含有検査キットを利用できますし、市は相当の予算を割いて安全な水道水確保のために努力しているので(NY市環境保護局)、ニューヨークの水は概ね安全と考えてよいでしょう。

地域によっては、必ずしも水道水が安全とは限りませんが、上下水道が整備・管理されている先進国の都市部では、心配する必要はないはずです。

企業のマーケティングに踊らされることなく、背後で起こっている問題や矛盾を認識し、自分なりに考えて行動する。
それが、ニューヨーク流エコかっこいい生き方なのです。

2012/01/30 訂正
2008/04/17

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